おすすめ本紹介1

朝の常磐線特急の中で書きました。えらい。でも1時間弱かけてこのクオリティ・この量なのか…絶望は一瞬一瞬に潜んでいます。黄色い線の内側に入れてください。

 

『ぼくは勉強ができない』山田詠美

主人公の高校生は、タイトルの通り学校の成績は良くないがあまり気にしておらず、いかに人に対して(特に女性に対して)魅力的な存在であれるかみたいなところに重きを置いている、周りとは違った存在として描かれている。そんな彼に関する短編8話+彼の小学校時代のエピソード1話が収められている。

まず、主人公はとてもモテる。女友達がつけている香水を変えたら気づくし、同級生とかではなくバーで働いている年上の女性・桃子さんと付き合っている。権威や集団になりさがることをよしとせず、固定観念に囚われながら生きている人をかわいそうだと思う。誰もが一度はぼんやりと憧れるが、憧れる以上にはなかなか近づけない、みたいな存在だと感じた。

一方で、結構自意識が強くて、一人であれこれ思い悩むようなところもある(その悩みについては、「賢者の皮むき」という章の内容が個人的には印象に残った)。桃子さんが他人と寝ているところを訪ねてしまったり、同級生の女の子にビンタされたり、決して順風満帆な感じでもない。

そんな彼の一味違った人生哲学(?)を、すがすがしい言葉遣いとともに楽しく読むことができる作品でした。

(一味違った人生を、一見しっかりと自分なりに展開している彼が、桃子さんに色んな意味で弄ばれているという構図もあるように感じて、結構際どいなぁと思ったり思わなかったりもしました)